
これはまだクロちゃんがいた頃のお話です。
ある日のビタミン・ハウス定休日。
ユッコさんはお姉さんと一緒。
勿論、愛犬クロちゃんも一緒だ。
ユッコさんのお母さんが入所している施設に行った帰り道、伊奈町の信号に停止しようと時速を緩めた。
視界の彼方、車の行きかう交差点をフラフラ彷徨う中型の茶色い犬を発見!!
「あっ!あの犬おかしい!
あっ!彷徨ってる捨て犬だ!」

ユッコさんは叫んだ。
その信号にユッコさんが停車した途端、今度はそのワンコが逆の方向からフラフラ現れた。
交差する車に煽られ、フラフラ、ヨロヨロ!
「わー!やっぱり彷徨ってる!助けなくちゃー!」
急いで左に曲がり、信号から15m位の所でハザードを点けて停まった。
お姉さんが言いました。
「やめなさいよ!ああいう犬を捕まえる事はできないの!
やめなさい!こんな所に車を停めて!」
と怒っている。
「嫌だ!ああいう犬を見殺しにしたら、私は自分の事を嫌いになっちゃうの!!」
ユッコさんは丁度クロちゃんに買ってあったジャーキーと、クロちゃんのリードを持ち、バタンとドアを閉めて先程の犬を追いかけました。
いたいた、フラフラ、フラフラ、あっちこっちへと歩いている、ガリガリにやせ細った犬。
足並みが普通ではない!
もう体力の限界を感じる犬。

「オーイ、オーイ」
ユッコさんはジャーキーを見せながら、必死で追いかける。
しかし、そのガリガリ犬も警戒して逃げる!
だが、その彷徨犬もジャーキーが気になる。
しかし、逃げる。
逃げる。
沢山の車が通る大通り、逃げる犬。
それを何かを見せながら追いかける不思議なおばさん、ユッコさん😄
バス停めて、
トラック停めて、
普通車停めて、
皆ビックリ!!
(皆さんごめんなさい)
フラフラ犬が車道に出てきたと思うと、その後ろから足の遅いおばさんが必死で走って来る!
皆、ポカーンという感じ。
「すみませ~ん」バスを停めて
「すみませ~ん」車停めて
ユッコさん全速力。
だが追いつけないユッコさん。
そのガリガリ犬は後を振り向きながら、通路右側の車庫がオープンになっている家に入って行ってしまった。
ユッコさんは、人様の家に入って行く訳にいかず、歩道から
「すみませ~ん、すみませ~ん」と大声を出した。
すると2階の窓が開いて
「何ですかー?」
と高校生位の女の子と、その弟さんと思える中学生位の男子が顔を出してくれた。
「今、お宅に犬が入って行ったのですが、お宅の犬ですかー」
↓
「いいえ、家には犬はいませんよ」
↓
「あーそうですか」
ユッコさんとそのお宅の高校生の女子と話していると、そのガリガリ犬がひょっこり姿を現わし、又駐車場の後ろに入って行ってしまった。
「いたいたあの犬です!あの犬!」
ユッコさんは大声を出した。
するとそこの家の男の子と女の子が外に出て来てくれた。
男の子が聞いた「どこの犬でしょうね」
「さっきその信号の所を彷徨っていたのです。
早く助けないと死んでしまうのよ。
動けなくなって死んでしまうか、車に轢かれて死んでしまうのよ。
あんなに瘦せていて、もう何日もご飯食べていないと思うの」
と3人で話していると、やっぱりこちらの様子が気になるのか、ジャーキーの臭いがするのか、又そのガリガリ犬が顔を出した。
皆で呼ぶが、警戒して出てこない。
ユッコさんはその女の子と男の子にジャーキーを渡し、犬を呼んでくれる様にお願いした。
「おいで、おいで」
さあ、今度は3人だ。
体を低くして、ガリガリ犬が出てくるのを待った。
待つ事15分。

何とそのガリガリ犬が高校生のお姉ちゃんの所のジャーキーに食らいついた。
パクパク食べている。
その間、急いでユッコさんはそのガリガリ犬にロープを結んだ。
そのガリガリ犬は首輪をしていないので、ロープを結ぶしか方法がなく、もう残りは40cm位しかない。
もう一回結ぶ事はできない長さだ。
これは大変!
車の所迄連れて行く事はできない。
大変な事になった。
リードを強く引っ張られたら、結び目が外れて又このガリガリ犬はどこかに行ってしまう。
困っていたら、
何と!
その女の子がユッコさんに言いました。
「私が抱き上げても大丈夫でしょうか?」
「うん!大丈夫!あなたのジャーキーを一番に食べに来たから、この子はあなたに心を許したのよ」
「分かりました」
その高校生の女子が両腕でしっかりとガリガリ犬を抱き上げました。
ユッコさんは、そのガリガリ犬のお尻の方を持ち上げて、
「頑張って、頑張ってー」
急いでハザードを点けて停車している車の所へgo―!
やっと車に到着。
そのガリガリ犬を乗せようと車の後ろのドアを開けた途端
「ワーイやっとユッコさんが帰って来たー」
と!クロ!
「イヤ!何か変な犬を連れて来たぞ」
「ヴーッ!ヴーッ」
急にクロちゃんは戦闘態勢!
「わっ!車にクロちゃんがいたんだ!」
「姉さんクロを押さえてー」
という状態でガリガリ犬は後にね。
大丈夫、大丈夫、絶対に幸せにしてあげるからね。
偉い!よく一人で生きて来た。
という訳でこの子の名前はラッキー君と決まり!!
ていうか、体調を整える事は勿論、とりあえず座れ!待て!お手!位はできないと次の飼い主を見つけられないので、ユッコさんは警察犬を育てている訓練士の元へそのガリガリ犬を預けました。
その訓練士の先生がユッコさんと出会えてラッキーだったから、
『ラッキー君』と名付けてくれました。
3ヶ月後、ラッキー君は色々な事をマスターして見事に見沼区のA様宅にもらわれて行き、今幸せに暮らしている。
